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オメガバースはSFかファンタジーか?2『黄金のつがい (ラルーナ文庫)』雨宮四季ネタバレレビュー

黄金のつがい (ラルーナ文庫)

黄金のつがい (ラルーナ文庫)

この世界の人間は、三つの血筋(ブラッドタイプ)に分かれている――
最下層の「孕む血筋(タイプ・コンセプション)」であるワスレナは、神と信じるディンゴに見捨てられた矢先、
憎き「支配の血筋(タイプ・インペリアル)」の頂点に立つゴールデン・ルール一族のシメオンに無理やり半身にされてしまう。
唯一無二の片翼(ベターハーフ)にはなれない愛のない半身誓約……
だが次第に二人の想いに変化が現れはじめた時、再びディンゴが! 
ワスレナが取った行動にシメオンは怒りを爆発させ、半身を解除してしまうが――!?
おお、あらすじがほぼ9割くらいネタバレしている。
雨宮四季さんのデビューは2013年。
フェロモンを撒き散らし、性犯罪を誘発するタイプ・コンセプションがオメガにあたるわけです。孕む性が差別の原因であるなら、タイプ・ノーマル同士、タイプ・インペリアル同士のCPでは、子供を産む側になるのはどっちか、すごく葛藤しそうです。CP同士で完結するなら構いませんが、妊娠していたら何が起きてもおかしくないのか? 妊娠中の人がちょっと外出したら、何が起こるかわかりません。
ちょっと、電車で座っていたら目の前に妊婦さんが来た、席を譲るor座り続ける、そんな話題から始まるさまざまなことを想起させます。それを男の身体でやってしまうというのが、オメガバースの面白味でもあるのではないかと思います。

とりあえず、アルファ=タイプ・インペリアル、ベータ=タイプ・ノーマル、オメガ=タイプ・コンセプションという独自の呼び方と独特な世界です。もふもふ、大正ロマンときて、近未来ファンタジーです。SFではなく、近未来ファンタジーなんだそうです。
たまに、SFから遠ざかろうとしたり、SFだから読者に敬遠されるのではないか、というあとがきを読むと、この現象は何なのかと考えさせられます。SFとファンタジー、JUNE世代とBL、これだけで卒論が書けるのではないでしょうか? むっちゃ費用がかかりそうですが、誰か挑戦してみませんか?

この勃起(ヒート)は、フェロモンに誘発されているだけか、それとも恋なのか、愛はフェロモンを超えるか(愛は性別を越えるのノリで)、など90年代から00年代前半の問いかけが、また違う形で繰り返されると考えるか?

コンセプションは、ノーマルやインペリアルに生殖行動の最中に噛まれるとつがいとして契約が成立して(半身)、フェロモンの流出が止まります。この世界の人間は、祖先が狼か猿かに分かれるのでしょうか? 「猿からではなく、狼から進化したー……」というセリフが作中のどこかのページに出てきていました。
噛まれたらオメガの意思とは関係なく、つがいになってしまう、半身契約を破棄されてしまえば、精神への衝撃で死んでしまうか、再起不能になってしまうか、そんなオメガ不憫設定。

アルファの中でも上位のアルファ、エリート中のエリートから成るゴールデン・ルールの支配体制を破壊しようとするベータがインペリアルになろうと人体改造したり、彼を慕うオメガはフェロモンを大量排出するために違法な人体改造したり、後半になってかなり面白い設定が盛り込まれていますが、内容の大半が美貌すぎてアルファやベータから色仕掛けを仕掛けられまくって、恋愛面の情緒がおかしくなった攻めと、反政府組織のボスとつがいになる実験を繰り返していたけど1人だけ捕らえられたオメガの生活費や食事を作るなどの家事をめぐる攻防です。
そして、攻めはいつも勃起してる。唐突に勃起して、フェロモンが出てると迫ってくるけど、流されたらいけない、攻めの勃起に発情するなと言い聞かせる受けの葛藤だったりします。

近未来だったら、出産前に遺伝子検査してしまえば、子どもがどのタイプかわかってしまうかなんて、どこかで夢を砕かれたような気分になったりもしましたが、私は元気です。
個人的な萌えとしては、第二次性徴期でようやく分化していくもやもやしたり不安定だったりする部分がある方が好みだなあ、なんて再確認した次第です。

#Give Captain America A Boyfriend: Η καμπάνια που έγινε viral - και με το δίκιο της!
最近の動向。ギリシャの映画専門サイトで、英語圏のtwitterでm/mやf/fを取り上げた記事があった。
Twitterではじめて言葉を交わしたギリシャ人が、性転換手術のレポートをLGBT関連のサイトに寄稿したよとpostしていたのがきっかけで知ったアカウントをフォローしていたら、日本製アメコミのBL化というか、m/mなイラストが流れてきてびっくりした。出典をたどっていったら、知ってる映画専門サイトにたどり着いたという世間は狭いよねという話。
ハガレンのレビューがきっかけだっただけに、彼は実写化をどう思っているのだろうか。