オメガバースはSFかファンタジーか?4 『蜜惑オメガは恋を知らない』ナツ之えだまめ
ゲームに夢中になると何もできなくなるので、欲望に従うとこうなります。ふゅーじょんぷろだくと以外のオメガバース、特に小説って全部追えてるのかな? 読書メーターにログインしたら知らない新刊で埋め尽くされて浦島太郎の気分です。そもそもオメガバースがSFかファンタジーかなんて問題を立てたのは何でなんだ?
【電子限定おまけ付き】 蜜惑オメガは恋を知らない (幻冬舎ルチル文庫)
- 作者: ナツ之えだまめ
- 出版社/メーカー: 幻冬舎コミックス
- 発売日: 2016/10/01
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
突如オメガ変転した智宏は9歳にしてヒート=激しい発情を覚えてしまう。その後周囲から性的な好奇の目を向けられ傷つき悩むが、高校に入学してアルファの恒星と出会い「高校生活、楽しいほうがいいじゃん」と屈託なく笑う彼に惹かれていく。アルファとオメガであったら誰でも“つがう”ことが出来るのに、二人は無二の親友の道を選ぶが―。
読書メーターに書いたざっとした感想。
蜜惑オメガは恋を知らない (幻冬舎ルチル文庫) パラ野さんの感想 - 読書メーター
9歳で性に目覚めたとあるオメガが好奇の視線にさらされ、学校に性的な混乱をもたらさないように長野県のオメガの保護施設で2年を過ごし、ネットで見たアルファの画像に惹かれて高校に進学しては、女子との戦いになるという、性をめぐるクロニクルという作風です。
子供を作るだけの「つがい」ははぐれオメガと呼ばれ放浪を続け、最後まで添い遂げる「伴侶」は運命の相手と呼ばれるかなり過酷な世界です。
アルファの方にも伴侶となるオメガを見つけるハンティング機能の有無は血統によるという、異性愛至上主義と血統が結びつくのもなかなか。
ふゅーじょんぷろだくとのような身体の構造やフェロモンの部分などサイエンス・フィクションのように見せる部分は同じなのですが、その社会構造に抗うか従うか、どのように順応するか、その部分はあまりありません。(オメガがベータを愛したら? オメガがアルファを組み敷きたいと思ったら? などなど)
はぐれオメガという性で世の中を乱す、見られる被写体として好き勝手な解釈から逃れ続けたために、心を閉ざし続け、恋愛などには自分に縁の無いものと「修道僧」のように生きてきた智宏が、自分がオメガになったあの日に起こったことを思い出し、恒星が相手だとホッとしてアニマルのように突進していったのは、「異常じゃない正常だ」という安心感が9割だったのではないかと疑う部分もあります。「マジョリティの側に入ってやったぜ!」みたいな社会から弾かれないための手段を手に入れたという安心感。
一応、淡い恋らしきものを攻めの恒星と高校時代に経験しますが、その後は恋愛のための時間を積み重ねることもなく、アニマルにくっつきました。
この世界のアルファとオメガはだいたい本能こそ全て、抗えない、もう伴侶として生きていくしか価値はないというレベルでアニマルです。
性欲と恋を間違えるなよ、などの身体のコントロールなど、BLが長く描いてきた問題なのだと思いますが、エロシーンが少なくても、すごくアニマルでした。
攻めが我慢できるワンコだったのが、余計に受けのアニマル度が高まったような気がします。
行動よりも思考回路がアニマルの場合もある。