オメガバースはSFかファンタジーか5 『ぼくの可愛い妊夫さま』七川琴
オメガバースという言葉が浸透するにつれ、妊娠出産ものという言葉が忘れ去られているような気がする。
やおい時代からある男の妊娠出産ものです。商業BLでは少ない印象です。
- 攻めが作った薬で受けが妊娠可能になる
- 受けが突然妊娠可能な体質になる
知っている妊娠出産ものはだいたいこんな感じです。
- オメガバースの妊娠出産は社会構造
- 妊娠出産ものはそのCPの偶発的なもの
ざっくりこんな分け方ができそう。いや、分けていこう。歴史だもの。忘れてはいけない。
太いお注射……してください。
気弱な37歳童貞の産婦人科医、弓削のもとに下腹部からの出血を訴える男がやってきた。屈強な大工の青年、岩本だ。いくら検査しても原因がわからず途方に暮れるが、その症状からある可能性に辿りつく。「正常に機能する卵巣・子宮を持った男性」――MFUU。そんなこととは思いもしない岩本は、産婦人科に回されたことを訝しみ、不安と緊張で苛立っていた。岩本を安心させようと超音波検査を勧める弓削だったが…!?
ぼくの可愛い妊夫さま (Splush文庫) パラ野さんの感想 - 読書メーター
ものすごく作り込まれた架空の妊娠出産できる体、MFUUです。
妊娠出産の上に生理ネタまで入ってます。
攻めの一人称で話が進むので、このジャンルが苦手な人も入りやすいのではないでしょうか。
攻めが受けのために近所のドラッグストアでナプキンを買ったり、受けの生理痛のために腰をさすったり、そんなシーンが出てきます。
あらすじだけでは本当に序盤なので、キワモノ扱いになりやすいですが、ガテン系の男が妊娠したらキャリアはどうなるか、同性も結婚できるが別姓ではなかったら職場でどういう選択をするか、結婚したことを誰に話すかなどの問題をかなり繊細に取り扱ってます。この部分が読み応えがあるので、導入のMFUUだけがクローズアップされてもったいない。
とりあえず、オメガバースと妊娠出産ものは分けていこうよという話と、オメガバースが出てきた後の妊娠出産ものとしての作品として、読んでおきたい一冊です。
別姓が認められない同性婚というのが、日本だと本当にありそうなのが怖いわ。