BL思考の種

BLlogiaの管理人がだらだら書くBL小説やBL漫画のレビュー

『スリーピング・クール・ビューティ』鳥谷しず 明るい母子家庭

新年会という名の小中学校の同窓会を欠席してしまいました。みんなには会いたかったけど、猫が死んでしまったばかりなので、不意に泣いたり不安定だし、じっと猫との思い出に浸ってたかったわけです。

ところで、地元の同窓会に行くたびに、離婚率高いなと思うのですが、みなさんはいかがでしょうか? 自分が小学生だった頃と比べて、離婚してる人たちが多くなってる気がしませんか?

シングルマザー、シングルファザー、ステップファミリー、そういう方々とリアルで出会うことも多いのでは? 読んでくださってる方が当事者かもな。

「親の離婚を不幸に感じている子どもの物語」って、そういう環境にいる人にとって読んでいて楽しいものなのでしょうか?

感動のための「不幸芸」のようにやたら当たるのも、「家族というピースさえそろってれば幸せ」神話の支持に加担して、離婚した友人たちへの差別の視線を投げかけているような気分の悪さを感じます。

BL小説って、どんなものだろうと読み始めてから、そんな居心地の悪さに悩まされてきましたが、解放されたとなった1冊を紹介します。

2010年刊行とずいぶん前の本になりますが、今読んでも新しさは消えない。

 

スリーピング・クール・ビューティ (ディアプラス文庫)

スリーピング・クール・ビューティ (ディアプラス文庫)

 

 まず、タイトルの『スリーピング・クール・ビューティ』とは誰かといえば、眠っている攻めの灰音のことで、作中でも受けの悠莉の眼差しの先に出てくる。

BL小説で受けは語りはするが、見る行為は誰がしているのか、不明瞭になる場合もある。積極的に見ている受けの視線がタイトルである。が、エロが特徴的な鳥谷しずの作品において、受けの赤い恥毛がメインである。

 

受けの悠莉は母子家庭の長男であり、インターナショナルスクールに通う妹の学費を負担しようとしたり、弁当屋を営み2人の子どもを育てる母親へ給与を渡そうとする家族想いの面が強調される。

父親は腕の良い料理人で、フランス料理店を経営していたが、友人の借金の保証人になり、その後にいろいろ自棄になって飲酒しながら階段を登っていたら、転倒して死亡してしまってから、一家は苦労することになるのだが、ここで嘆き悲しんで世の中に恨みつらみをぶつけるようなキャラクターではなく、「父親は尊敬しているが、同じように騙されたらいけないから弁護士になる」と一直線に走っていくのが、悠莉という受けの新しいところでもある。

何よりも面白いのが、公安である灰音とくっついた後は家にこもって恥毛いじられ放題なのに不満を持っている悠莉が、妹から送られてくるテーマパークなどでのデートに嫉妬する部分である。

お兄ちゃんなんだから情けないと思っても暴走するロマンチック街道、妄想が止まらないお外で堂々とデート、妹への嫉妬。

恋を知ってしまった自分という制御できない見知らぬ他者と葛藤する受け悠莉という造形は、まだ新しいと感じる。恋した相手がどんなマニアックなプレイを仕掛けてきても、喜んでしまう自分に振り回されるのも、また面白いものです。

 

久しぶりに表紙を見たら、こっそり恥毛が見えてるんですね! 驚いたわー。